SIPECジャーナル

大学生の抱える女性問題

2019.11.30
その他

「キミ、大学どこ?」

「オレ?東大行ってるんだ」

多くの人がこんなことを一度は行ってみたい。そんなことが言えたら、どんなに人生は華やかなものになるだろう。誰もが認める、日本で一番頭の良い学校に通ったら人生は勝ちレースだと思えてならない。合コンではモテモテに違いない。

でも、女性の立場ではどうだろうか。何の気兼ねもなく「東大に行ってるんだ」と答えられるだろうか。

平成31年度の東京大学の入学式では上野千鶴子氏は式辞でこう述べた。

「東大の女子学生からはこんな話を聞きました。『キミ、どこの大学?』と訊かれたら、『東京、の、大学...』と答えるのだそうです。」

また、上野氏は付け加えて、東大の中には実質的に東大女子が入れず、他大学の女性にしか参加を認めないサークルがあると言った。(参照1)

上野氏の祝辞を見てみると、東大の女性が世間の中で堅苦しい思いをしているということがわかる。日本で一番難しい入学試験をかいくぐった彼女たちはなぜこんな苦しい経験をしなくてはならないのだろうか。

しかし、現状はどうなのだろう。私は現在、東大で勉学に励んでいる1年の矢野さんという女性に話を聞いた。彼女は入学式に参加し、実際に上野氏の祝辞を聞いたという。

----上野氏の祝辞について矢野さんはどう思いましたか。

「少々オーバーな発言があったような気もするが、気づきや納得する点も多かったです。男女間の教育格差において問題の根源となっている親世代の固定観念を打ち砕くには、強い訴えとインパクトも必要であったのでしょうね。」

----上野千鶴子氏の挨拶は矢野さんと友達の中でも話題になったか。

「少し話題になりました。でも、それほど気に留めてない人が多かった印象があります。尊敬の念を抱く友達を1人だけ知ってます」

----実際、矢野さんは「東京の大学」と言うのかどうかとその理由は。

「驚かれるのが面倒なときは大学名を伏せますね。でもそれはひけらかしているようで嫌な気がするからで、「女性だから。」という理由はほとんどないです。」

彼女の話では東大に存在する女性問題をあまり重くとらえていない現状がわかる。大学一年目ということもあり、実感するような機会がなかったのかもしれない。

しかし、彼女も将来、東大に通っていることの被害を受けてしまうかもしれない。矢野さんによれば、東大の瀬地山教授は2019年度に入学した東大生のうち、女性の割合が昨年度を下回ったことを非常に重くとらえているという。東大が女性の学生の入学を強く求めているにも関わらず、可能性を発揮できない女性が一定数いるということだ。

「東大」

日本で一番輝かしい学歴は、絶対的に一つのバックグラウンドとして世間から絶対的に高い評価を受けることが出来る。しかし、そのネームバリューは同時に自分の社会での立場を確保するために包み隠されてしまう可能性をはらむ。

世の中ではよく「能ある鷹は爪を隠す」というが、その能が人々に認められるような態勢が人々に浸透していなくては何の美徳も意味もないのではないだろうか。

参照1:平成31年度東京大学学部入学式 祝辞