SIPECジャーナル

国際政治学科教授 林載桓先生にインタビュー

2019.10.29
その他

「発言しやすい」「私たち目線でわかりやすい」「なんだかやる気が出る」

生徒たちに授業の印象を尋ねると、皆口をそろえてその魅力を熱く語り出す

_____林載桓先生

青山学院大学 国際政治経済学部 国際政治学科教授。共産党内部を緻密に見ていく中国政治、比較政治を専門とされている。

先生にお話をうかがいたい。そう思ったのは、一つの素朴な疑問がきっかけだった。

「韓国人の林先生は、なぜ韓国ではなく中国の政治を研究することにしたのだろう」

返ってきた回答は、「特別な理由はないです」というもの。しかし、その後語られた言葉に、先生の"揺るがぬ軸"のような強いものを感じた。

「他の人がやらないことをやりたい」

その熱い思いが常に先生を突き動かし、これまでの「中国政治」という道を切り開いてきた。

「元々中国政治には興味がありましたが、その中でも難しい分野を専攻したいと思ったんですよ。リスクをかけないとリターンは望めませんからね。そしてこの中国のエリート政治を細かく研究していく分野にたどり着きました。」加えて、「私にしかできないと感じたんです」と自信をものぞかせ、一気に場の空気は和らいだ。

丁寧にインタビューに応じてくださる先生の瞳はまっすぐで輝いており、情熱さと野心を兼ね備えていた。

興味の赴くままに、且つチャレンジ精神も忘れない___

それは学生時代から変わっていない。受験生の時も、周りが受験勉強に励む中、林先生は自分の興味に従って本を手に取り読んでいたという。韓国の激しい受験戦争は親を教育熱心にさせ、子供達に大きなプレッシャーを与える。林先生もまた、両親の期待を背負う韓国の学生の一人だった。「韓国の子供たちはハッピーじゃない。これは1つの社会問題として考えなければならない」と、彼はそう言い放った。

 熱い期待を背負わされることに苦痛を感じ、何度も親とぶつかった青春。だからこそ、自分の子供に過剰な期待はしない。「自分の子供には自由にさせる。その子の興味がどこにあり、何に才能を持っているかはわからない。親が決めつけてはいけない。」今年の夏、次男が生まれた。上の子は3歳だ。「思っていた以上に可愛い」そう話す林先生の頬は緩み、父親の顔をしていた。

 林先生はいくつもの論文を書き上げ、毎日新聞のアジア太平洋賞特別賞など、数々の賞を受賞してきた。子供の頃に答えた将来の夢は博士だ。その頃から変わらない好奇心と探究心は、今も林先生の根となり花を咲かせている。

時を経て、博士となった今、仕事に対するやりがいはどこにあるのか。「教育と研究、両方同じくらいやりがいを感じている。」そして林先生は、「研究に意味があるかどうかを教育で確認する。教育の手応えが研究に活かされる。教育と研究は相反するものではない」と続けた。

研究者であり教育者。林先生にとって生徒はどんな存在なのだろうか。

「一緒に議論したい相手」

これが林先生の答えだ。「自分は生徒にきっかけを与えるにすぎない。」生徒を自分と対等な立場として、一緒に議論を進めていく。林先生の経験と変わらぬ信念が形作ったその考え方が、先生の授業が持つ心地よさの核心にあった。

文責:田中瑠津 土屋佳蓮