SIPECジャーナル

2019年12月14日の活動

2019.12.16
ジャーナリズム

師走、気づけば今年もあと少し。寒がりの私は冷たい風に身を縮めながら大学に通っています。

ジャーナリズム指導室です。2019年、指導室の活動も残りわずかとなりました。

14日の活動では、MBSの白井敏雄さんに来ていただき、「テレビの創り出す世界」という題で講義をしていただきました。

講義の冒頭ではエイプリルフールにBBCが放送した、空を飛ぶペンギンの映像を見ました。私は以前にこの映像を見たことがありましたが、その時は人々のメディアリテラシーの低さを指摘する視点から動画が取り上げられていました。しかし、動画を見たあと白井さんの口からは意外な言葉が出てきました。

テレビは「嘘も平気で出来るメディア」であるとおっしゃったのです。「嘘も出来る」と可能の表現が使われていたことが印象的でした。私がそう感じたのは、テレビは嘘を流すべきではない、危険だと思っていたからだと思います。

メディアの流す嘘が人々に誤った固定観念を植えつけることは危険です。しかし、テレビが「嘘を平気で出来る」メディアだからこそ、そこに娯楽性が生まれるのかもしれません。

白井さんはテレビを「人を楽しませるメディア」であるとおっしゃいます。テレビの番組表をみてみても、その大半は娯楽番組。テレビに娯楽性は欠かせません。さらに民放のテレビ放送にとっては商業性も重要であり、視聴率は無視できません。

だから、人々が好きそうな話題を放送する。政治家の失言を1時間かけて取り上げるワイドショー。何度も何度も、その"一言"が取り上げられます。朝日新聞の記事に載っていた言葉を借りれば「水に落ちた犬をたたく」現象です。しかし、このように面白おかしく放送すると、番組の視聴率が上がるというのです。

野党はメディアが食いつくようなところを取り上げ、国会では本当にやらなければならない議論がなかなか進まない。

「メディアの論理によって政治が動いている。政治の論理で議論を進めていかなければならないはずなのに」

講義を通し、特に私がはっとさせられた言葉です。

政治の論理で議論を進めなければならないのかもしれない。でも、メディアの論理で政治が動くこともあるのだとしたら、質の良い報道は政治、そして私たちの社会をより良くするはずです。

娯楽性が欠かせないテレビにおいて、どう質の高い報道を提供できるか。改めてテレビ、そしてメディアを見つめ直し、その現状を理解する時間となりました。

1年 田中瑠津