システムエンジニア
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 米州システム部
白木 見佳さん
2016年2月から南アフリカにあるいすゞ自動車の現地子会社に出向して、「サブサハラアフリカ」と呼ばれるサハラ砂漠以南のエリアでトラックの販売促進のために働いています。サブサハラアフリカはまだ経済が未成熟で発展途上の国が数多くあります。経済を発展させるためにはまずインフラを整えなければいけませんが、そのためには様々な物資を輸送する必要があります。そこで活躍するのがトラックです。人々の生活を支えるための水や食料の運搬にも活躍する、重要な製品を扱っていることに責任とやりがいを感じています。
仕事は主に販売とマーケティングです。実際にトラックを必要としている企業や物流会社などを訪問して売り込みをしたり、商品ニーズのヒアリングを行って販売に向けた調査などをしています。また現地販売代理店やお客さまから得た情報を、本社の関連部署につないで商品企画やサービス、生産に反映させることもあります。
アフリカで求められる車は、日本で求められる車とは異なります。車の扱い方は非常に荒く、積載オーバーは当たり前。舗道されていない道が多く、足回りへの負荷が非常に高いです。そのため現地では、頑丈で長く使えて、しかも価格の安い車を欲しがりますが、耐久性と価格はトレードオフの関係にあるため、現地の使われ方に耐えられる車両にすると必然とコストは高くなってしまいます。安価なインド製や中国製の車へと顧客が走りがちになるところを「日本車は製品が良いから長く使えるので、ライフタイムコストを考えれば費用はこちらの方が安い」など説得力のある話をして、自社の車の販売に結びつけています。
大学時代に、貧しい国が豊かな国になるためにはどうしたら良いのか、開発のあり方や戦略などを考える開発経済学に興味を持ちました。一度発展途上国で生活をしてみたいと考え、大学3年次を終えたところで休学して、外務省の在外公館派遣員制度に応募し、ナイジェリアにある日本大使館に2年間勤務しました。
初めてナイジェリアを訪れた時、空港から街へとつながる一本道を車で走りながら、早朝のまだ薄っすらと暗い中でひとつも街灯がないことに気づき、「とんでもない場所に来てしまった」と思ったことを鮮明に覚えています。ナイジェリアはアフリカの中でも治安が悪い国で、上司と地方へ移動していた際に銃撃戦に巻き込まれたこともあります。怖い思いもしましたが、アフリカの人たちは基本的にとても明るく、自分たちの国を愛して生き生きと暮らしています。いつの間にかアフリカに魅了され、彼らの生活の手助けをしたいという気持ちになりました。
その思いは帰国後も強く、日本の高い技術力の集積とも言えるクルマを売ることで発展途上国に貢献したいと考えました。
在ナイジェリア日本大使館勤務以後、今に至るまでずっとアフリカと関わって仕事をしています。アフリカ情勢には慣れたつもりですが、それでも振り回されることはしょっちゅうあります。例えば、アフリカには原油の輸出で外貨を稼いでいる国がありますが、近年の原油価格の下落で国としての外貨収入が減っています。それを懸念して、急に排ガス規制のレベルをあげて輸入車を排斥し、外貨をなるべく使わないようにする方針をとり、車がまったく売れなくなるという事態に陥ったことがあります。それがひとつの国だけでなく、いくつもの国で起きます。突然の暴動があれば、決まっていた出張もとりやめです。先日はコートジボワールという国で給与未払いによる軍隊の反乱が発生したため、急遽緊急脱出しました。予定していたことが思うように進まないことなど日常茶飯事。でもそれにいちいち苛立っていては疲れるだけです。アフリカで仕事をするためには広く、物事に動じない心を持つことが大切。日本の企業に所属しているので、日本側が求めるスピード感や成果との間に乖離があることもありますが、アフリカにいる間は、アフリカの価値観で仕事をするしかありません。こちらの事情を押し付けても反発を買うだけ。現地では自分たちの方が異端なのだということを忘れず、相手を理解することに努め、言いたいことはやんわりと、相手に伝わりやすく工夫して伝えるように心がけています。
メールチェック
社内会議をして出張の多い社員同士で情報を共有
日本との電話会議をし、出張の報告や各国の課題について議論
出張報告書を作成
現地代理店へ電話やメールで連絡。次の出張の準備など
パスポートとアフリカ諸国のビザ、イエローカード(黄熱病予防接種証明書)
アフリカはビザ無しで入れる国が少なく、ほとんどの国が黄熱病の流行地域ですので、これがなければほとんど仕事になりません!
グローバル化が進み、これからのビジネスは異なる文化や価値観を持つ人々とのコミュニケーションが不可欠。日本人という枠組みにとらわれず、学生時代からなるべく多くの外国人と触れ合い、コミュニケーションスキルを磨いておく。
2006年国際経済学科卒業、ダイハツ工業入社。大学時代に在外公館派遣制度でナイジェリアにある日本大使館に勤務した経験を生かし、2010年からダイハツの親会社であるトヨタ自動車の系列会社、南アフリカトヨタへ出向。2013年に、日本の自動車メーカーの中で商用車の売り上げがアフリカでNo.1のいすゞ自動車へ転職。2016年から現職。