ヴィルジーリオ 麗奈
CONTRIBUTE TO THE WORLD | 世界のために働く
翻訳業/日本にある他国政府機関勤務
フリーランス/インスティトゥト・セルバンテス東京 文化部
ヴィルジーリオ 麗奈さん
翻訳の仕事とは?
外国語を日本語に訳したり、日本語を外国語に訳す仕事。母語としてそれを読む人が的確に理解できる文章や表現を作成する専門家だ。出版物や文芸作品を手がける翻訳家のイメージが強いが、学術論文や、あらゆる業界の契約書やマニュアルなどのビジネス文書、販促ツールの文書などを訳す実務翻訳や、映画やテレビ番組、ニュース映像のセリフやナレーションを訳す映像翻訳など、様々な活躍の場がある。

「外国語が好き」を仕事にしたら「翻訳」だった

 父がイタリア人、母が日本人なので、幼い頃から外国語に関心を持っていました。母語は日本語ですが、日常にあったイタリア語と英語、大学の第二外国語で学んだスペイン語と、外国語の習得自体が楽しく、同時に、「この英文を日本語ではどう伝えるのが一番適切だろうか」と「しっくりくる言い方」について考えることに面白味を感じていました。大学では翻訳の授業はもちろん、認知言語学のゼミを選び、国際交流や外国語に触れる機会を大事にしました。留学生との交流プログラムやバディプログラムに参加し、スペイン語はインテンシブの授業も受けていました。おかげで1年間イギリスに留学した時もスペイン人留学生と仲よくなれました。
 留学で留年する人も多いのですが、私は帰国してすぐ就活し、4年で大学を卒業後は一般企業に勤めました。しかし、やはり翻訳の道への思いが募り、翻訳学を学ぶためスペインの大学院に行くことを決意しました。修士課程は1年間なのですが、あえて2年かかるパートタイム履修を選択し、フリーランスで翻訳の仕事を始めながら勉強と仕事を両立させることにしました。
 最初は翻訳の仕事の求人サイトからあちこちに履歴書を送り続け、小さな案件でも得られた仕事に取り組みました。やがて、安定して仕事をくれるいくつかの翻訳会社さんとのお付き合いが始まりました。ファッション分野の翻訳なら、あるブランドの春夏コレクションの翻訳がきた会社から、次に秋冬コレクションの仕事がくるという具合です。他にマーケティング、観光、ITビジネスの案件も手がけるようになりました。

ヴィルジーリオ 麗奈さん

スペイン語圏の豊かな文化を伝える仕事

 帰国してからも翻訳の仕事は順調でしたが、ひたすら自宅でパソコンに向かう仕事のため、人と接する機会があまりにも少ないのです。そこで、翻訳と両立できる、スペイン語を使える仕事を探し、インスティトゥト・セルバンテス東京のパートタイム求人に出会いました。スペイン語を生かせる他の仕事はフルタイム勤務の求人が多く、翻訳を本業としたい意思を貫けないと考えました。
 インスティトゥト・セルバンテス東京は、スペイン語の振興と教育、スペイン及びスペイン語圏文化の普及のためにスペイン政府が世界中に置いている機関の東京支部です。私が所属する文化部は、この機関と事業の認知のために、スペインや日本の様々な組織と連携した文化関連のイベントを開催しています。当館内で行う文化講座や講演などのコーディネートや準備が主な仕事ですが、たとえば昨日は、日本の国際交流の組織の方と私たちで日本の高校を訪問し、スペイン語に親しむプログラムを実施しました。スペイン語はスペイン本国だけでなくメキシコやアルゼンチンなど多くの国で話されていること、「おんぶ」「おじや」などスペイン語が発祥の日本語もあることなどを楽しく知ってもらいました。
 週3日の勤務ですが、このように外に出ることもあり、時として通訳を務めたり、イベントレポートを書くなど、スペイン語を駆使しながら人と接する、刺激を得るという目的は大いに果たされており、インスティトゥト・セルバンテスにはとても感謝しています。

ヴィルジーリオ 麗奈さん

強みの分野を磨き、映像翻訳にも挑戦したい

 現在の翻訳の仕事の割合は、英語4:スペイン語4:イタリア語2といったところです。英語の翻訳は件数が多いですが競合者も多いので、スペイン語やイタリア語を特技にできでよかったと思います。学生時代は翻訳家に憧れたといっても、スペイン語をここまで武器にできるようになるとは思いもしませんでした。第二外国語でも好きになれば道が拓けることはあるし、大学で学ぶことはすべて、どう転んで仕事につながるかわからないと言えます。
 翻訳とは外国語が理解できるだけでなく、日本語表現が豊かであることも必須です。書かれていることを100%理解した上で、元の意味を失わずに的確に日本人に伝えることが重要だからです。その分野、業界に対して常にアンテナを張り、よく使われる単語や言い回しを自分のボキャブラリーとして獲得する努力をしています。また、最近翻訳会社から、他の翻訳者の仕事に点数をつけるテスト評価を頼まれるのですが、自分より高いレベルの翻訳を目にすることもあり勉強になります。
 今後は、これが専門と胸を張れる分野を極めていきたいです。映画も好きなので、映像翻訳の世界にも興味があります。また、通訳のスキルも、会議通訳を務められるくらいの技術を身につければ仕事の場も広がるので、挑戦していきたいと思っています。

ある1日のスケジュール

  • 8:30〜8:45

    メールへの返信

  • 8:45〜13:00

    翻訳作業

  • 13:00〜14:00

    昼休憩

  • 15:00〜19:00

    インスティトゥト・セルバンテス勤務(メール対応、事務作業、イベント準備等)

  • 20:00〜

    30分以内でできる小さな翻訳の引き受け(ヨーロッパの翻訳会社とは時差があるため)

マストアイテム

ジムグッズ

ジムグッズ
翻訳の仕事は座りっぱなしになるので、運動不足解消のため週3~4回ジムに通っています。続けられるか半信半疑でしたが2年半経ち、今では「趣味はウェイトトレーニング」と言えるほどです。会社帰りの人で混む前の時間帯にトレーニングできるのは、フリーランスのメリットです。

この仕事に就くには...?

翻訳者は資格はいらないが、その分、外国語を読む、書く、聞く、話すのすべての能力に高いレベルが求められ、同時に日本語もそれに匹敵する能力が必要だ。外資系企業でマニュアルやカタログを訳すなどの実務翻訳では企業に所属する人もいるが、多くの翻訳者はフリーランス。最初は履歴書や作品を送って自分を売り込んで仕事を得て、自己管理しながら確実に仕事と信用を積み上げていく。言語だけでなくその国の文化、歴史、生活習慣を学び、常に更新する努力と、日本についてもそれを怠らない姿勢が大切だ。

ヴィルジーリオ 麗奈さん

ヴィルジーリオ 麗奈さん
Virgilio Reina

フリーランス
インスティトゥト・セルバンテス東京 文化部
※2019年取材時

2014年国際コミュニケーション学科卒業。日本企業に1年半勤務し退職。2015年~2017年ポンペウ・ファブラ大学大学院(スペイン)で翻訳学を学ぶ。同時にフリーランスで翻訳の仕事を開始。帰国後、スペイン語を使い続けるためにインスティトゥト・セルバンテス東京の非常勤スタッフに。現在週3日勤務しつつ自宅では欧米のファッションブランドの案件を中心とした翻訳業で活躍の場を広げている。

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