システムエンジニア
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 米州システム部
白木 見佳さん
私は三菱UFJ信託銀行のルクセンブルクにある現地法人で、ケイマン籍ファンドの資産管理業務のオンボード/照会対応を行っています。ひとつのファンドには、投資家、運用会社(ファンド運用を実行する投資会社)、カストディ(資産管理会社)、アドミニストレーター(資産価値を評価する会社)、トラスティー(受託者、ファンドの責任者)など、様々な関係者が国内だけにとどまらず世界各国にまたがっています。
私はカストディであるルクセンブルク三菱UFJインベスターサービス銀行に所属しています。例えば、投資家が新しいファンドを立てて、米国や発展途上国に投資したいという場合には、それぞれの国で口座を開設する手続きをしたり、必要書類の形態を整えたり、為替の手配をしたり、国をまたぐ関係者や、社内の関連部署との調整を行います。日本の大手投資家が、海外の代表的な運用会社を指名して数百億円単位で外国に投資するので、マーケットタイミングを逃さぬようファンドの立ち上げを迅速に行い、運用開始後もスムーズにオペレーションされるよう、一つひとつの業務を確実に行うことが大切になります。
当行は、ルクセンブルクの他、オフショアファンドの設定が盛んなケイマン諸島やアイルランドでのファンドの設定のお手伝いをすることもあります。またカウンターパーティーも世界中に散らばっていて、例えば私が今関わっているファンドでは、インベスターは日本にいて、運用者は米国や欧州諸国の企業が担当し、アドミニストレーターはアイルランドにいて、トラスティーはケイマン諸島、そしてカストディである私はルクセンブルクにいるという環境で世界中とつながりながら仕事をしています。ルクセンブルクは東京とは時差が-8時間(夏時間は−7時間)、ニューヨーク/ケイマン諸島とは6時間、アメリカ西海岸とは9時間の時差がある中仕事をするので、効率的に電話会議をこなす必要があります。
新規にファンドのオンボードが決定されると、このように世界中をつないで新しいチームが発足されますが、以前仕事を一緒にしたパートナーと組むことも多く、気心が知れた人が世界中にいるというのもエキサイティングです。また投資家、運用会社をはじめ最先端の投資手法や、金融商品に接したり、金融規制への対応を行なったり、業務を通じて日々新たに学ぶことがあります。
私は新卒で当行に入ったわけではありません。日本にいた時には通信社のロイター(現・トムソン・ロイター)に就職していました。主に営業として、ロイターが所有する債券発行情報やそれに付随する利回り、為替のレートなどの金融データを配信する端末を顧客に販売する仕事を担当し、ここでマネーマーケットや為替、株式、債券のことなど、基礎的な金融知識を積みました。その後結婚を機にルクセンブルクに住むことになったのですが、ロイターでの経験と英語力を生かして当行での職を得ることができました。
当行では現在職員が約170人おり、そのうち日本人はおよそ20人ですが、それ以外は約20カ国から集まったグローバルな職場です。同じ国の人であれば、もしかしたら、あ・うんの呼吸で通じるようなことも、一から説明しなければいけないことも多いです。最近チームをマネージングするポジションに就いたこともあり、異文化コミュニケーションには特に気を使うようにしています。例えば、日本ではお客さまに満足していただくようきめ細かなサービスをしますが、ヨーロッパではお客さまも「ビジネスパートナー」とみなす文化があり、お客さまのニーズも異なります。ルクセンブルクに立地しているとはいえ、当行は日本企業ですから、お客さまは日本の方が多いですし、日本的なサービスを期待されます。こうしたギャップを埋めるべく日本人である私がサポートしたり、マインドセットに関わったりしながら、スムーズに業務を運営できるよう尽力しています。
出社後メールチェック、日本からの問い合わせ電話などに対応する
アジアの運用会社との電話会議
他部署の人たちと情報交換などをしながらのランチタイム。月に数回2時間程度のロングランチをすることも
金融機関の新しい規制に対応するための進捗状況確認会議。社内の顧客担当責任者、関連部署の責任者のほか、アドバイザリーも出席
ファンド設定準備、欧州や米国からの問い合わせ対応
米国西海岸の運用会社との電話会議
卓上カレンダー
ファンド設定スケジュール管理のため、世界の主要都市・市場の祝日がひと目で分かる卓上カレンダーは欠かせません。またファンドの設定日はよく変更されるので、フリクションペンも大活躍しています。
金融知識や金融機関で働いた経験はあるにこしたことはないが、必須ではない。それにも増して重要なのは英語でのコミュニケーションの能力。世界中の人とコミュニケーションをとるので、高いコミュニケーション能力が必要。またスケジュール管理能力も問われる。その他、顧客対応やマルチタスクのスキルも重要。
2001年国際政治学科卒業、同年夏から米国シラキュース大学マックスウェルスクール行政大学院に留学。その間にNGOや国連日本政府代表部でのインターンを経験。2003年に帰国。2004年にロイター(現トムソン・ロイター)に就職。外資系金融機関担当を経て営業職に。結婚を機にルクセンブルクに移住。2009年に前身のMitsubishi UFJ Global Custody S.A.に入社。