森 鮎子
LIVE OVERSEAS | 海外に住んで働く
海外特派員
日本テレビ
報道局 国際部
バンコク支局
森 鮎子さん
テレビ局の海外特派員って?
海外に駐在して、担当エリアで起きた事件、事故、災害などの即時性の高いニュースや政治、経済、生活情報などのあらゆる分野を取材して、映像と情報、原稿を日本に送る記者。スピードが求められる時事ニュースを取材する以外に、自分が追いかけたいと思うテーマを見つけて、長い時間をかけて取り組んで取材した企画ものをまとめることもある。

アジアとその周辺を含む広範囲のニュースに目を凝らす

 報道カメラマンとして、紛争地域を取材しドキュメンタリーを撮っていた父の影響もあって、いつの頃からか、世界各国で起きているまだ誰も知らない出来事や報道の裏側にある真実を現地で見つけて、自分の言葉で伝えることができる特派員を目指すようになりました。日本テレビに就職してから10年目となる2018年1月からは、念願かなってタイのバンコク支局に赴任しています。
 日本テレビでは、北京と上海、ソウル、バンコクと、アジアには4ヶ所の支局を置いていますが、中でもバンコク支局は東南アジア全域とオセアニア、アフガニスタンやパキスタンまで、かなり広範囲をカバーしています。それらの国々で時事ニュースとして取り上げるような出来事が発生すれば、1秒でも早く現場に向かって現地から中継をしたり、番組のVTRのために深掘りした取材を行っています。また平昌オリンピックなどのように、担当エリアではなくても大きなニュースがあるところには応援に駆けつけることもあるので、赴任からまだ4ヶ月しか経っていませんが、すでに3ヶ国に出向きました。ほかにも自分が現地に入ることができない場合には、「ストリンガー」と呼ばれる現地の契約記者と連絡をとって映像や情報を入手し日本に送ります。その際は、自分で情報収集してるわけではありませんので、その情報が他人からの又聞きなどではなく警察発表などの1次情報なのか、内容が信用に足るものなのかなどもしっかりと確認します。

3・11で感じた、テレビ報道の力

 入社以来約10年、報道の現場で仕事をしていますが、最も忘れ難く、またテレビでの報道の意義を実感できたのが、2011年の東日本大震災の時でした。宮城県で唯一被災を免れ、あらゆる患者が殺到する事態となった石巻赤十字病院に密着して現場からリポート。救命救急の医師から「医療物資も食料も明日で尽きてしまう」という切迫した事態を聞き、病院が枯渇寸前の状態に陥っているという状況を生中継したところ、翌日、日本中からたくさんの支援物資が届きました。こうした緊急性が高い情報であっても、新聞報道では伝わるのが翌日になってしまいます。速報性が高いテレビだからこそできることがあるのだということ、また映像の強さが視聴者を動かすこと、そしてそれが人の命を守ることにつながるのだと肌で感じることができました。
 大学時代、世界中の弱い立場の人を手助けするために直接支援するJICAやNGOなどに就職することを考えた時期もありました。ただそれよりも私は、世界中にいる虐げられた人たちの声を伝えたい、援助の輪を広げるきっかけとなる報道をしたかったのだと、初心を思い起こさせるきっかけとなりました。3・11で報道の意義を実感できたことが、今も国外で奮闘するための力となっています。

森 鮎子さん

現地スタッフと協力して仕事を遂行

 バンコク支局はカバーエリアが広く、扱う内容も、政治、経済情報から事件、事故や災害、生活情報に至るまで多岐にわたっているので、ニュースを取材するために多くのスタッフが働いています。タイでも、また他国でも先述したストリンガーが警察などに出向いて、まず5W1Hの情報を得てきますし、内勤の現地スタッフに各種リサーチや通訳を頼むこともあります。現地スタッフとの良好な関係を築くことが重要になりますが、特にタイは転職社会なので、待遇や人間関係に少しでも不満があったり、人前で怒られたりするとスタッフはあっさりと仕事を辞めてしまうことがあります。日本側が求めるミッションをクリアすることが私の使命ですが、日本の感覚のままでいると現地スタッフのスローな時間感覚にストレスが溜まってこちらの身が持たないので、自分の感覚を少しタイ化させつつ、また現地スタッフのモチベーションをあげる工夫をしながら、毎日仕事をしています。
 現在、タイには高齢化の波が押し寄せて来ています。タイ政府は、高齢化対策で先を行く日本の介護制度を見習った福祉政策を推し進めようとしているところです。このようにタイと日本との関係が見えるようなニュースにアンテナをはりながら、現地にいるからこそ掴める情報を拾い上げて発信していきたいと思っています。

森 鮎子さん

ある1日のスケジュール

  • 7:00〜12:00

    新聞やBBCなど大手メディア、ネットで世界のニュースをチェック。日本の昼のニュースに間に合うように原稿を作成。早朝から取材のことも。

  • 12:00〜13:00

    ランチ。事件や災害がいつどこで起きるかわからないので、食べられる時にしっかり食べることは生活の上で非常に大切

  • 13:00〜18:00

    夕方のニュースに向け、午前中と同様の流れで原稿を作成。そのほか企画ものの取材に向けたリサーチや仕込みをしたり取材先に出向いたりする

  • 18:00〜24:00

    タイのNGOや大使館関係者と会食。情報を得るためにさまざまな人と会ってつながりをつくる

マストアイテム

ムエタイ教室

ムエタイ教室
体力勝負の仕事なので体力づくりの一環として、またタイの伝統スポーツを学ぶため、さらにはタイ語や現地の生活を理解するためにも1週間に最低1回は通っています。

この仕事に就くには...?

1ヶ月間家でゆっくり寝ることができないこともあるような、とにかく体力がなければ務まらない仕事のため、身体的なタフさは不可欠。また精神面では、仕事への信念をしっかり持つことが大切。他人から何かを言われてすぐに自分の姿勢がゆらぐようだと報道内容にブレが生まれたりするので、芯のある強い心を持つこと。

森 鮎子さん

森 鮎子さん
Ayuko Mori

日本テレビ
報道局 国際部
バンコク支局
※2018年取材時

2008年国際経済学科卒業、同年日本テレビに記者として入社。社会部に配属となり、捜査当局の担当者の家に朝晩通い詰めたり、事件の容疑者の自宅前で20時間近く張り込みをするなどして、取材のノウハウを学ぶ。被害者のご家族や加害者につながる人に話を聞きに行った時には、嫌がられて水や塩をかけられたことも。体力的にも精神的にもキツイ時期を乗り越え、2018年1月から現職。

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