
翻訳業/日本にある他国政府機関勤務
フリーランス/インスティトゥト・セルバンテス東京 文化部
ヴィルジーリオ 麗奈さん
世界中に事業展開する三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)各社のシステムの設計・構築をミッションとする会社のシステムエンジニアとして、これまで三菱 UFJ 銀行の国内勘定系システム、 海外系システムの開発を担当してきました。現在は米国の MUFGユニオンバンクに出向し、米国で長年稼動しているシステムの更改や最新テクノロジーの活用を主軸とした IT インフラの抜本的改善を目指すプログラム*に携わっています。
私の具体的な仕事はプログラム全体の統括です。各プロジェクトチームが作成する成果物(計画書、設計書など)の品質チェック、進捗・コスト・リスク管理のモニター、東京の関係チームとのコミュニケーションサポートなどです。米国のMUFGにおいて過去最大規模と言われる注目度の高い大型プロジェクトも含まれているので、綿密に計画・管理しながら進めるとともに、MUFGの経営陣に対して適時適切に状況を報告する役割も担っています。
私は学生時代に IT 系を専攻したわけではなく、就職活動中に金融系システムエンジニアという職種を知り、社会の基盤を支えるやりがいのある仕事だと思って選びました。実際に今携わるITインフラの刷新も、着実にプログラムを遂行することで、お客様の暮らしや企業活動、社会基盤への貢献につながると実感できるのが喜びです。
*共通目的・戦略目標を達成するための、関連するプロジェクトの集合体をこう呼ぶ。
日々接する現地スタッフは、米国人だけでなく、インド人、中国系やスペイン語圏の人など、バックグラウンドやカルチャーが一人ひとり違います。母語も様々ですが、社内の共通言語は英語で、ディスカッションや報告書・議事録作成なども英語で行います。
仕事に求められるレベル・基準について彼らとの間に認識の相違があれば、お互いが納得のいく着地点を模索しながら進めなければいけません。たとえば、私が担当している預金システム更改のプロジェクトでのこと。プロジェクト計画段階で、私が想定したテストの種類のうち、「このテストは不要だ」と言われたものがありました。まずは不要だと思う根拠を説明してもらいましたが、それでも計画に見込んでおくべきだと考えたため「もう少し検討しよう」と提案し、合意に至るまで議論を重ねました。
日本で仕事をしていても自分と異なる価値観を持った人はたくさんいますが、海外ではより多くの異なる価値観・考え方と接することになります。私は、合意どころか、真に伝えたいことが相手に伝わっただけで嬉しくなる時もしばしばです。もちろん、彼らの経験・知識や考え方から学ぶことも多く、私も成長させてもらっています。大事なのは、日本でのやり方にこだわり過ぎず、多様性にあふれるメンバーとのやり取りの中で何がベストかを都度考え、場合によっては従来のやり方やルールを見直すマインドを持つことだと思います。
統括チームメンバーや各プロジェクトメンバーたちとともに、目指すゴールに向かって1つ1つ課題をクリアしていくことに充実感があります。悩み・苦しみを協力して乗り越えることで信頼関係が深まり、喜びや達成感を共有するという過程は、何度経験しても毎回感動します。
米国への異動は社内公募でチャンスをつかみました。入社9年目に海外系システムを扱う部署に異動し、三菱UFJ銀行 ニューヨーク支店の勘定系システムを更改するプロジェクトに関わったことがターニングポイントでした。日米間をつなぐハブシステム構築の担当者として、現地スタッフともやり取りしてプロジェクトを推進した経験や、米国駐在の先輩方の姿を見て、自分もいつか海外に出てみたいと思ったのです。今後のキャリアについて上司と話した際、「今より成長したいと思うなら、環境を変えることも必要」と言われたことも、チャレンジしようと思ったきっかけの一つでした。
語学は、社内の語学研修に参加して高校時代の留学経験で培ったレベルから落ちないように気をつけていましたし、システムエンジニアに必要な一般知識は、情報処理技術者試験の勉強やベンダーが開催する研修に参加しながら習得していました。米国でも技術系のセミナーに参加する機会はあります。
海外拠点で仕事をするということは、ある意味 "日本代表"です。システムエンジニアとしてシステム開発の一連の経験があることはもちろん、各局面で必要なルール(一般知識だけでなく、銀行内の標準ルールも含む)を十分に理解していることが必要です。現在の統括チームの仕事では、各局面で注意すべきことや検討しておくべきことを各プロジェクトメンバーにフィードバックすることもあります。自分のこれまでの経験や培ったスキルを還元できる時、やりがいを感じます。
メールチェック、その日のスケジュール確認
チーム内の進捗会議、午後の会議資料準備など
西海岸(技術スタッフ作業現場)メンバーとの進捗会議
プロジェクト成果物のレビュー、フィードバックまとめ
東京との会議、翌日以降のタスク整理
歩いて通勤
自宅から会社への片道20分は雨でも雪でも歩いています。朝は、その日のタスクの優先度を考えたり、帰り道はその日の出来事を振り返ったりと、頭の整理をする時間になっています。素敵な店を見つけたら「あの件をやり遂げたら来よう!」など、小さな目標をつくっています。
プログラミングなどの興味や知識、IT素養があることが望ましいが、ITの専門教育を受けていない文系の学生でも新卒採用されるケースはある。国家資格をはじめとする資格も多くあるが、初めてシステムエンジニアの仕事に就くためには必須ではない。大切なのは、IT技術の進化に対応していこうという向学心や向上心、ものづくりへの情熱だ。
2004年国際政治学科卒業。同年4月、株式会社UFJ日立システムズ(統合により2009年から三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社)入社。2017年5月、米州システム部(ニューヨーク事業所)に異動。ITインフラ刷新などの大型プロジェクトを手がけている。