大室 直子
CONTRIBUTE TO THE WORLD | 世界のために働く
国連WFP職員
国連世界食糧計画(United Nations World Food Programme)
アジア地域事務所
大室 直子さん
国連WFPの民間連携担当マネージャーって?
(※大室さんの場合)
世界から飢餓をなくすために、民間企業や団体、個人などから、活動に必要な資金や物資を寄付してもらったり、企業が有する専門技術を提供してもらうための連携に関わる業務を担当。新規の連携の場合は効果的な寄付活動の仕組みを考案・構築し、既存の案件の場合は改善案などを提案する。また、企業や団体に国連WFPからアプローチする際には寄付依頼資料を作成し議論の方向付けも行う。

「飢餓ゼロ」に向け、民間からの支援を得る活動に従事

 国連WFPの活動資金は、各国政府からの拠出金で98%が賄われており、残りの2%を民間企業や一般の人々から寄付をいただいて成り立っています。
 世界が2030年までに達成すべき環境や開発に関する17の国際目標を掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」の内に「SDG2:飢餓をゼロに」という目標があります。目標の達成に向けてより多くの飢餓や貧困に苦しむ人を支援するためにも、各国政府からの拠出金だけではなく、民間からの支援を受けることがますます重要になってきています。そこで私が所属する民間連携のチームでは、企業や団体にアプローチをして寄付を依頼したり、後述する企業が持っている専門的な技術支援を仰いだり、また個人のみなさまが寄付しやすい仕組みをつくるなどしています。
 具体的に私が行っているのは、クレジットカード会社と連携して、顧客がレストランで食事をした際にクレジットカードで支払いをすると、食料が不足している地域の子どもたちに学校給食1食分を寄付することができるという事業をアジア地域の数カ国で実現させたり、ファストフード会社と連携して店頭での募金活動を行うために、必要な資料作成や現地情報の収集を行っているなど、仕事は多岐に渡っています。

大室 直子さん

企業の特性を生かした支援活動を促しWIN-WINの関係を構築

 企業が国際機関に対するドナー(寄付者)となる時、これまではその多くが企業の社会的責任(CSR)という観点での取り組みの一環でした。「貧困や飢餓をなくすために」という名目での寄付が、その企業の活動が一切行われていない地域で使われたとしても、「CSRを果たしている」として、株主などのステークホルダーもそれを認めていましたが、最近ではCSVと呼ばれる、自社の企業活動に関係があるところに資金を拠出することで支援先と自社双方に共通価値を創造する流れに変わってきています。社会ニーズや課題に主体的に取り組むことで企業としての社会的価値を創造し、結果として自社の経済的な価値も創造されるというものです。
 例えば食品メーカーが寄付者であれば、途上国で食べられているおかゆのような主食に、栄養を添加できる粉末を提供してもらったり、またその粉末そのものの開発技術などを現地の人に教えたり、その企業ならではの技術を寄付として提供してもらうのです。開発途上国は栄養改善ができるようになり、一方で食品メーカーは、現地の人に自社をアピールすることができるうえ、安定した原材料を確保するルートの新たな構築や実質の収益をあげていただくことなどができます。
 またこれはCSV以外の話になりますが、企業連携のひとつの事例をお話すると、私は現在タイのバンコクにあるアジア地域事務所に在籍して、東南アジア、南アジア、太洋州全般を担当エリアにしています。このエリアは最近特に地球温暖化の影響で、水害などの自然災害が増えていて、災害に見舞われた人々に対しても国連WFPでは食料支援をしています。ある時、パプアニューギニアが災害に遭いましたが、奥深いジャングルがあり、どこまで被害が出ているのか、政府でも把握できないことがありました。そこで状況を把握するために連携を依頼したのが携帯電話会社です。昨今はジャングルの奥地でも携帯電話が普及している!ので、こうした災害時の支援を依頼することなどもしています。

活動を未来に繋げるために、若い世代に理解の輪を広げる

 現在、世界の飢餓人口が増えていることをご存知ですか? 世界人口の9〜10人にあたる約8億2,100万人が飢餓に苦しんでいます。こうした飢餓の現状を伝え、支援者を増やすことも、私の大切な仕事のひとつです。
 2017年11月、秋田県の高校の生徒約30名がタイの事務所に研修で訪れてくれました。「食の宝庫と言われている秋田に住む自分たちが、飢餓にあえいでいる人たちにできることは何か」を研修のテーマとしていたので、飢餓の状況や国連WFPの活動について説明をしました。その時は短い時間での交流でしたが、連絡を取り続け、彼らの募金活動の支援をしたり、日本人の元職員に学校で講演をしてもらったり、今も飢餓への理解促進のために協力を続けています。
 2011年に国連WFPに入職した当初、私は、セネガル共和国の事務所で食料支援や学校給食支援事業に携わっていました。今は飢餓に苦しむ現場ではなく、そこに寄付をする先進国の人々と関わる仕事ですが、セネガル共和国での経験から、飢餓の現状や具体的な支援策を話すことができています。課題に気づいていただけたときや支援者の増加につながっていることは大きなやりがいとなっています。飢餓のことは知っているけれど、どうサポートをしたら良いかわからない人や企業に対して具体的な行動につながる手助けができること、「ゼロがイチになる」ということは、未来を拓くための非常に大きな前進です。人の力というのは、時に力強いうねりとなって大きな変化を巻き起こします。その一端を担う仕事ができて嬉しく思います。

大室 直子さん

ある1日のスケジュール

  • 6:00〜7:15

    子どもの朝の支度と幼稚園へのバス送迎見送り

  • 9:00〜10:00

    出勤してメールチェック。一日のスケジュールを確認

  • 10:00〜12:00

    アジア地域事務所内や担当エリアの各国と電話会議

  • 12:00〜13:00

    同僚とランチミーティング

  • 13:00〜16:00

    担当する国々との電話会議やメールのやり取り。その後ローマ本部などと案件のやり取り

  • 16:00〜17:30

    翌日の会議の準備や、欧州、米国との電話会議

  • 17:30

    退社して幼稚園にお迎えをして帰宅

マストアイテム

ジム

ジム
朝、子どもを見送ってから出勤までの1時間を自分の時間として、ジムでランニングと筋トレをしています。時間を見つけてレースに出たり、土日も時間を見つけてはトレーニングをしています。

この仕事に就くには...?

国連の機関はポジションの空き自体が少なく、またコネクションが必要であったりすることも多いため、大室さんは外務省のJPO派遣制度(将来的に国際機関で正規職員として働くことを目指す若手日本人を対象に、期間を設けて国際機関に職員として派遣し経験を積んでもらう制度)を利用。ただしJPO制度に合格するにも語学力はもちろんのこと、修士号の取得や関連業務経験も求められるので、人材を必要としている機関が求める要件に目を向けて経験を積むことが大事。「問題を解決しよう」とする行動力や、困難なことにぶつかった時に柔軟に対応することができるしなやかさなどは、この仕事に活きる資質。

大室 直子さん

大室 直子さん
Naoko Omuro

国連世界食糧計画(United Nations World Food Programme)
アジア地域事務所
民間連携担当マネージャー
※2018年取材時

2004年国際政治学科卒業、米国クラーク大学の大学院に留学。国際開発と社会変容修士卒業。2007年財団法人結核予防会に就職。5年間の勤務中にザンビア共和国に2年駐在して、地元の人々の健康に寄与。外務省のJPO制度を利用して2011年に国連世界食糧計画に入職。現在は別の国際機関に勤める夫と息子とタイで暮らす。2018年7月に第二子出産。
「WFPは女性が働きやすい職場です。産休や育休は日本より短いですが、職場は授乳できる環境があり、子ども連れで勤務できます。出張も子どもが一歳になるまでは子どもの旅費を補助してくれますし、フレキシブルな勤務体系にも対応してくれます」

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