
システムエンジニア
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 米州システム部
白木 見佳さん
シャムスはアラビア語を主とした中近東言語(ペルシャ語、ウルドゥー語)を中心に、タイ語やスリランカで使用されているシンハラ語などの稀少言語を扱っている翻訳会社です。1986年に父が創業し、私は営業として企業や大使館などとパイプを結んで翻訳の仕事を受注しています。また自社に常駐する翻訳者だけでなく契約している外部の翻訳者に翻訳を依頼し、仕事のスケジュール管理や、できあがった制作物を自分の目でチェックして高い品質を確保するように努めています。
制作物はさまざまあり、書籍のような出版物はもちろんのこと、自動車や家電製品などに付けるマニュアルや証明書、おもちゃなどに添付するWARNINGシート、インバウンドで近年急増している観光客用のパンフレット、大使館のパーティーの招待状や、Web制作なども行っています。政府関係機関などの文書の場合は、英語とアラビア語の双方向翻訳が多く、日本企業との仕事の場合は日本語とアラビア語の双方向翻訳が多い傾向にあります。
「ニッチな言語はシャムスに相談してみよう」と一部では認知していただいていますが、まだまだカバーできていない国も多いので、さらに対応言語を増やすことも考えながら、通訳の人材派遣など新しい業務も視野に入れつつ業務を発展させていきたいと考えています。
中東地域の人の特徴として、大風呂敷を広げる人が多い傾向があると感じています。「こうしたい」という理想があるのは良いのですが、現実とのバランスを考慮していないことが多いです。また例え要職にある人でも思いつきで物事を言ってくるので、すり合わせをしっかりするなど、心構えをちゃんとして用心することが必要になります。
また仕事が雑だったり、無茶振りも平気でしてきます。2週間で納品しなければいけない翻訳の発注を受けて1週間が経過した時に「間違った原稿を渡してしまった」と連絡を受けたり、膨大な量の翻訳を「3日でやってくれ」と依頼してきたり。もちろん断ることもできますが、アラビア語を扱う翻訳会社は、私の知っている限り都内にもう1社あるくらいなので、うちが引き受けなければ各所に影響が及ぶことは容易に想像できます。ですからこちらが無理をしても引き受けることもありますが、翻訳者の方々のモチベーションを下げてはいけないので、営業として料金やスケジュールの交渉をしっかりするように心がけています。ほかにも仕事として発注されたものの、途中で仕事が頓挫することもあるので、リスクヘッジとして前金をもらうなどの対応策も練ったりします。
アラブの人はとても人懐っこく、距離感が近くて、すぐに人と仲良くなります。ですから大使館などが主催するパーティーなどに参加して、和気あいあいとした雰囲気の中で打ち解けあい、その後の受注につなげることも多々あります。私は数字を数える程度しかアラビア語を話せませんが、こうした場所でのコミュニケーションは大概英語なので、大学時代に1年間、アメリカのオレゴン州に留学した経験を生かしています。
私は海外の人と仕事をする際に大切なのは、自分の常識にとらわれないことだと思っています。「これはありえない」と一蹴するのではなく、「そんな考え方もあるのか」と、まず自分の中に取り込むこと。私の場合は、留学してタイやメキシコ、インドやサウジアラビアなどさまざまな国の友人ができたことで、自分の考え方や知っていることだけが正道なのではないと知りましたが、こうした考え方は国内にいても十分身につけられるのではないかと思います。
メールチェック
翻訳案件を翻訳者・制作・チェッカー担当にまわす。制作物のチェックをする
昼食
クライアントを訪問(営業や打ち合わせ)
午前と同様、翻訳案件を翻訳者などにまわしたり、制作物をチェックする
大使館でのパーティーに営業をかねて参加
フリクションボールペン
後で消すことも可能なので、校正などの指示を書き入れる時にはフリクションのボールペンを使用しています。スーツの下にもいつも赤と青の2色をしのばせて持ち歩いています。
常時社員を募集しているわけではないので、自分から売り込みをすること。熱意が伝わったり、経験が買われるなどすれば、社員を募集していなくても採用されることもあるので、例え「募集はない」と言われても、アプローチをしてみることで道が開けることもある。
2011年国際経済学科卒業、同年広告代理店に入社し営業職に就く。大学時代にオレゴン州の大学に1年間留学。寮には入らず、同じ学部に留学していたサウジアラビア出身の兄弟の家に転がり込んで生活を共にしたことで、国際感覚を身につける。シャムスを経営する父親が体調を崩したことをきっかけに、2015年シャムスに入社。