
システムエンジニア
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 米州システム部
白木 見佳さん
ITエンジニアの仕事は、大きく分けると5つの作業工程があります。お客さまがどんなシステムを必要としているのか詰める「①要件定義」をして、次にその要望を実現するために「②システム設計」を行い、設計に合わせて実際にOSやソフトウェアなどをコンピュータに入れて設定していく「③システム構築」をして、想定通りにシステムが動くかどうかなどの「④テスト」を行います。うまく作動したら、実際に運用してもらう「⑤本番移行」となります。
ITエンジニアとして企業に入社してしばらくすると、その後は大きく3つの職種にステップアップすることになります。ひとつが専門分野の技術をとことん極めるITスペシャリスト、もうひとつが全体のシステム設計を担当するITアーキテクト、そしてプロジェクトの管理をするプロジェクトマネージャー(PM)です※日本 IBMの場合。多くのITエンジニアにはずっと技術畑でいられる最初の2職種の人気が高く、やや技術から離れるイメージのあるPMは敬遠されがちです。
私の場合は、ITエンジニアとして4年間ひとつの業界を担当し、同じような仕事をずっと続けてきたので「このままでは成長できないな」と感じ、異動の希望を出していたところに、上司が「プロジェクトマネージャーをやってみないか」と声をかけてくれたことが転機となりました。担当者が2名という小さなプロジェクトでしたが、これまでと異なる業務に就くことへの興味の方が大きかったので、迷わずPMへの道を進みました。
初めてのPMの仕事では、計画立案やコスト管理なども含めた一連の管理を任されたのですが、何から何まで頭で思い描いていた通りにできずに、大きなショックを受けました。今の自分の立場であの時を振り返ってみれば、初めてのマネジメントはできなくて当たり前。経験者にいろいろなことを尋ねながら一つひとつ仕事を覚えていけば良いと分かるのですが、ただその時は自分でうまくハンドリングできたと感じることが何一つなく、終わった時は「どうにかこうにか仕事を終えることができた」という疲労感でいっぱいでした。とはいえ、お客さまからは評価をいただき「梅村さんに任せれば大丈夫」とおっしゃっていただけたことが嬉しく、自分としては「できなかった」と感じた仕事でしたが成功体験へと転換されて、PMの仕事にやりがいを感じたように思います。
またこれは個人的な意見ですが、ITに従事する人はみんな、困難な局面に向き合うと、血が騒ぎます。もちろん障害は発生しないにこしたことはないのですが、障害対応すると勉強になりますし、チームで対応策を練り、課題を乗り越える過程はとてもテンションがあがります。こうした傾向があるので、私も新しい仕事にチャレンジすることには面白さを感じます。
PMとなって5年が過ぎた頃、仕事で初めて海外に赴任しました。担当していた日本の大手銀行の、アジア各国に散らばる支店のシステムを統合するというビッグプロジェクト。いくつもの案件がある中で、私は「統合基盤構築」「メールシステム更改」「拠点アプリケーションのシンガポール移設」という3つのプロジェクトのPMを任されました。私以外のメンバーはすべて現地人で、中国、インド、フィリピン、カナダなど多種多様な出身国の技術者を束ねることになりました。お客さまもベトナム、インド、パキスタン、オーストラリアなどさまざまな国の人が集まっているため、すべての業務を英語で行いました。
この仕事で最も気を配ったのが「チームビルディング」です。これはPMの大切な仕事のひとつで、どういうスキルを持った人を何名チームに入れ、誰にリーダーを務めてもらい、どのように進捗管理をしたりコミュニケーションを取っていくかを決めていきます。またいかに明るい雰囲気をつくってモラルやモチベーションの高いチームを組織するかもチームビルディングに含まれます。
システムの構築はやらなければいけないことがたくさんあり、さらに途中で想定外の変更が入ったりするので、いかに風通しをよくし、漏れのない仕事をすることができるかは、このチームビルディングにかかっているといっても過言ではありません。良いチームができなければ、いざ課題に直面した際に、報告が上がって来ず、これまで構築してきた内容をすべてやり直さなければいけなくなるような失敗につながりかねないからです。私はメンバーとランチに行ったり、みんなでBBQをしたり、仕事以外でのコミュニケーションも取るようにしながら、時には仲間を信頼して仕事を一任するなどして人間関係を築くなど、良いチームビルディングに全力を注ぎました。その結果、無事にプロジェクトを終えることができ、今でも連絡をとるメンバーもいるほど、気心が知れた仲間もできました。
IT分野は常に進化の途上にあります。これからさらに多くの技術が開発されていくと思いますが、技術の進化をお客さまの業務の発展や安全性を高めることなどにつなげて、誰にとってもより良いIT社会をつくることに貢献していきたいと考えています。
メールチェック
チーム内定例ミーティング
自席でお客さまへの報告資料を作成
本社システム部とのシステム連携に関する電話会議
構築したシステムのテストやデータ移行に関する会議
他社担当チームを含めたプロジェクト全体ミーティング
他社担当チームを含めたプロジェクト全体ミーティング
翌日のミーティング準備など自席で作業
スターバックスのタンブラー
コーヒー好きなので、1日に2杯は飲みます。タンブラーはシンガポールで購入。日本では珍しがられます。
ITに興味を持つことが、ITエンジニアになるための入口。仕事に就く前から優れたITスキルを持たなくても良い。PMになるためには外部機関が認定するプロジェクトマネジメントに関する国際資格PMPなどを取得する必要がある。
2002年国際政治学科卒業、ITスキルを特別学んだことはなかったが、ITの世界に興味があったため、日本IBMに入社。2006年頃にプロジェクトマネージャー専任となる。主に金融機関を担当し、2012年には日本の大手銀行のプロジェクトで約2年半シンガポールでの仕事に携わる。英語は高校時代に1年間オーストラリアに交換留学生として行った時の経験が生かされ、コミュニケーション能力は、大学時代にゼミで学んだ異文化間コミュニケーションが少なからず役立ったと感じている。