仲山 今日子
WORK ALL OVER THE WORLD | 世界をとびまわって働く
フリージャーナリスト
仲山 今日子さん
フリージャーナリストとは?
企業に雇用されないフリーランスの立場で、自分の求めるテーマについて取材し、記事や著作としてメディア媒体に発表する。提供した記事に支払われる報酬が収入源。媒体から執筆を依頼されるには実績が必要で、記事の質以外の取材力やフットワークも含めて自らを売り込む時期を経る。特定のメディア出身者はそれが強みとなるが、発言の中立性を問われる場合もある。取り組むテーマによって取材活動や発表の場は様々だ。

シンガポールを拠点に世界の食文化を発信する

 2013年にシンガポールに移住し、現在はシンガポールや日本のほか、世界各地のレストラン、料理、シェフに関する記事を執筆しています。多い時で月に5カ国ほどを回るので、シンガポールに1週間しかいないこともあります。シンガポールは国境を意識せずに海外を飛び回る人が多く、日本で働いていた頃より世界が小さくなった気がします。
 中国系、マレー系、インド系など多民族が行き交う国は食文化も豊かで、レストランも多種多様。普段はインビテーションに応えて週に5~10回、メディア向けのテイスティングに参加し、そのうちの何件かを4誌~5誌に寄稿しています。だいたいは雑誌掲載とともにWEB記事としても配信されています。日本人読者に向けた日本語の記事もありますが、シンガポール人向けや海外メディアへの記事は英語で執筆します。取材も、日本人シェフへのインタビュー以外は基本的に英語です。
 参加するフードイベントは様々ありますが、たとえば2018年6月にスペインのビルバオで行われた「世界のベストレストラン50」の発表では、過去16年で最大の約1,000人の受賞シェフやメディア関係者が集まった様子と、ランクインした日本のレストラン名を速報しました。また、イタリアの小都市タルビジオでのフードイベントは海外のシェフも集う20年続くもので、人口約4,000人の町が10月の2日間は1万人以上の人であふれます。食による地方の再生・活性の視点でも興味深い取材となりました。

仲山 今日子さん

一流人の物語を引き出すことがモチベーション

 ジャーナリストになるのは幼い頃からの夢でした。大学卒業後はジャーナリストに近づくために記者になろうと考えましたが、先にテレビ局のアナウンサーに合格。いずれ記者職に転向しようと、当初から局の先輩にお願いして現場を体験できるようカメラワークや編集を教わりました。先輩が教えていた大学院のメディアリテラシーの授業に参加させてもらったり、海外で働くため準備として週1回英語の塾に通うなど、勉強の機会は逃さないようにしていました。
 転機は、テレビの仕事の面白さと海外留学をしたい気持ちで揺れていた38歳の時、シンガポールに開局する日系テレビ局からオファーがきたこと。食と文化がテーマの仕事で、もともと料理も好きだった私にとって幸運でした。英語を使って働きながら、かつ、食の分野の英語力を磨ける日々が始まり、ジャーナリストへの道が拓けたと思います。

仲山 今日子さん

 20年近くテレビ局の仕事でメディアのトレーニングを積んだので、人前で話す経験、取材の裏付けを取ること、誤解の起きない表現をどうするかなどを理解していたのは、今の仕事に大きなプラスでした。インタビューも、苦でないどころかとくに好きな仕事。情熱を持って仕事をしている第一線のプロから、私しか聞けなかった話を得られた時、これまで誰も書かなかった切り口、内容で文章が書けた時が一番うれしいです。
 料理だけ撮って「おいしいです」と添えておしまいの記事でいいなら、私はこの仕事をしていません。この料理をどんな気持ちで作ったのか、どうしてこう料理したのか、それがこれからの料理にどうつながっていくのかを伝えていきたいのです。

モットーは早さ、正確さ、オリジナリティ

 記事の執筆では、誰よりも早く、細かく、自分らしく書く努力をしています。具体的には、1日だけのフードイベントがあってディナーが終わるのが午後11時だとすると、部屋に戻ったら眠る前に執筆し、自分で撮影した写真とともにコースのすべての料理の紹介とシェフのコメントもつけた記事を朝までに仕上げることもあります。プレスキットと呼ばれる主催者側からの写真素材などはたいてい翌日の午後に届きますが、私の記事はそれよりずっと早く発信されているわけです。
 いくつかのレストランアワードの審査員も務めていますし、書くものが人に影響を与える以上、知らないで書くのは無責任なので自分の味覚も向上させたいと考えています。たとえば鴨肉なら、複数の産地のものを購入していろいろな方法で調理し、味の違いを覚えます。低温調理したのかオーブンで焼いたのか、食べた瞬間にわかりたいからです。シェフに「どうやって作ったんですか」と聞くのは最終手段。原則は自分で推定し、合っていたかを食べ終わってから確認させてもらいます。最近は、「何も書かなくていいから、来て、食べて、今日子がどう思うか聞かせて」と信頼してくれるシェフもいます。
 海外でのキャリアはまだ浅い私にとって、世界中で出会う同業者から学ぶことは多く、彼らとの交流もこの仕事の魅力です。これからも、もっと発信力を高め、もっと料理のことを知って、食のシーンの未来についても真摯に考えていきたいです。

ある1日のスケジュール

  • 8:30~9:00

    自宅のプール、もしくはジムでエクササイズ

  • 9:00~12:00

    原稿執筆

  • 12:00~15:00

    ランチテイスティング

  • 15:00~19:00

    原稿執筆

  • 19:00~23:00

    ディナーテイスティング

マストアイテム

アクセサリーボックス

アクセサリーボックス
インドで購入した大理石のアクセサリーボックスです。髪の毛よりも細い繊細な線や美しいカーブの象眼細工はインド政府の表彰も受けた職人さんによるもの。どこにもサインがないのですが、「この技術で作れるのは自分しかいない。だからサインは必要ない」ほど一目でわかる高いクオリティとオリジナリティだから。自分もその域に近づきたい、そう思って愛用しています。

この仕事に就くには...?

先入観でとらえず、物事を人と異なる角度で見ること、「できない」と思わずに「どうしたらできるか」を考えることが、ジャーナリストのスタンス。取材対象から伝えるべき言葉や現象を引き出す情熱を持つことが大事だ。記事の提供先やルートは、最初は自分から媒体を調べ直接連絡するなどして開拓する。

仲山 今日子さん

仲山 今日子さん
Kyoko Nakayama

フリージャーナリスト
※2018年取材時

1996年国際経済学科卒業。テレビ局に入社し、結婚・出産を経て2012年まで局アナウンサーとして勤務。2013年、シンガポールの日系テレビ局からオファーを受け移住。ラジオDJなど仕事の幅を広げるとともに、フリーランスのジャーナリストとして本格的に食の世界の取材・執筆に携わる。現在、世界のメディアに寄稿する他、いくつかのレストランアワードの審査員も務めている。

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