システムエンジニア
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 米州システム部
白木 見佳さん
街頭アンケートや国勢調査などで、多くの方がリサーチの一端に触れていると思います。私はそのリサーチをする会社に勤務し、マーケティングリサーチャーとしてさまざまな企業から商品やサービスに関する市場調査の依頼を受けて、世界各国でリサーチを行っています。
仕事の流れは、まずクライアントがどのような目的で調査を実施したいのかをヒアリングし、どのような手法のリサーチを行うのかを含め調査企画を考えます。次に、私は海外調査案件担当なので、調査対象国や地域それぞれの言語を使った質問項目を作成し、現地調査会社と打ち合わせをしてリサーチを実施し、データを集計して分析を行い、クライアントに報告します。
私は、タバコのような嗜好品から自動車のような高額商品まで、主に消費財の調査を担当しています。例えば商品パッケージの評価だったり、新車のデザイン候補の中からどのデザインの人気が高いかを調べたり、CMに対する反応を集めたりして、最終的には「どうしたら商品が売れるのか」につながるリサーチをすることが多いです。そのため扱っている商品や業界に対してできるだけ普段から興味を持つようにしています。興味を持てば、調査を多角的に見ることができ、調査の精度や内容が上がるように感じています。
世界各国でリサーチをするのは面白くもありますが、配慮しなければいけないことも多く、神経を使います。アンケートの質問項目が正しく翻訳されているか、言語別に内容にばらつきが出たりしていないかといった基本的なことから、政治・経済の情勢によってはデータに対する変動要因が発生することもあるので、データが集計されてきた際には、数字の背景にある社会、経済、心理的な変動に配慮してデータを読み取る必要があります。
私が担当する仕事のひとつに、モーターショーの出展ブースの評価案件があります。2年前に先輩から引き継ぎ、最初は先輩のやり方をトレースするだけでしたが、クライアントの担当者が変わったこともあり、思い切って自分のアイデアを盛り込んだ調査の提案をしました。要約すると「どのブースが良かったか」という調査なのですが、ブース全体の好感度と個別の展示内容に関する評価の関連を、統計学的に分析することを前提にしたアンケートのフレーム設計を行いました。例えば、ブースのサイズが大きければそれだけインパクトが大きくなって来場者の印象に残りますし、また日本では白っぽいライティングが好まれますが、中国は赤いライティングのものに魅かれる傾向があります。このような数字の裏側にも着目して、リサーチ結果を報告し、クライアントに認めてもらうことができました。さらに調査の結果を受けて、クライアントのビジネスが良い方向に進んだ時には、仕事に自信もつきましたし、それが仕事へのやりがいにもつながっています。
リサーチには大きく分けると定量調査と定性調査があり、定量調査は最低100人から多い場合は数万人に対してアンケートをとって、市場や人々の傾向を読み解きます。それに対し、どうしてその回答が選ばれたのかなどを調べるのが定性調査です。座談会や個別のインタビュー形式で行われることが多く、グラフや数値だけではわからない、行動のもととなった理由を肉付けしていきます。
各国で行われるリサーチはそれぞれ現地の調査会社が行うので、私のような日本の担当者が現地入りする必要はないように思われるかもしれませんが、定量調査においては調査が行われる環境や調査員のアンケート内容に対する理解度、また質問量の適切さ(長すぎて回答者が飽きていないか等)を確認します。また、定性調査では話の展開に応じた追加質問やインタビュー内容の軌道修正も重要になります。さらに、回答に影響を及ぼす会場を設定していないかなど、細かくチェックする必要があるので、現地にはなるべく行くようにしています。
やはりモーターショーでのことですが、ある自動車メーカーのブース内で定性調査が行われていたため、そのメーカーに偏ったリサーチの結果が出てしまったことがありました。こうしたことが起きないように、さまざまな実施状況を確認する意味でも担当者は現地に行く必要があり、2ヶ月に1回程度、海外に出張しています。数字をベースに、世界や事象を読み解く仕事はとても面白く、今後もリサーチャーとしての腕を磨いていきたいと思います。
メールチェック、スケジュールの確認
午後のクライアントとの会議で使用する報告書のデータや体裁などをチェックして印刷するなどの準備
ランチ
クライアントと調査結果の報告書を使った会議
データの追加分析や過去データとの比較検証など、報告会でクライアントから寄せられた残課題に対応
翌週に控えた海外調査に関して、現地パートナーと電話会議
集計チームからあがってきたデータの確認やレポートのコメント書きなど、作業系の仕事をこなす
TopreのキーボードとMicrosoftのマウス
身長が190cm近くあって手の大きい自分にあったサイズのマウスと、叩いても音がソフトで作業音がうるさくないキーボードを使用。長時間使うものなので、フィットする道具は欠かせません。
業界規模がそれほど大きくないため、元々採用数は少ない。加藤さんも現在の会社が新卒者の採用を見合わせていたのに「面接をしてほしい」と連絡し、その意欲や大学での研究がかわれ採用となった。入社にあたってはデータ分析チームが社内にあるので、加藤さんのように統計学の知識は必ずしも必要ではないが、何千単位であがってくるエクセルのデータを抵抗なく見ることができる素養は必要。
2011年国際コミュニケーション学科卒業、2013年大学院修士課程卒業、同年日本リサーチセンターに入社。子どもの頃からものを比較することが好きで、小学6年生の自由研究は、少年野球チームのエラーの数をポジション別に比較。大学院では、曖昧な枠組みで語られがちな「文化の違い」を定量的に比較するため、心理統計学の分析手法を援用した文化比較を研究。