太田 祥歌
CONTRIBUTE TO THE WORLD | 世界のために働く
NPO法人プロジェクトマネージャー
認定NPO法人日本ハビタット協会
プロジェクトマネージャー
太田 祥歌さん
NPO法人のプロジェクトマネージャーって?
(※日本ハビタット協会の場合)
日本ハビタット協会は、都市化、災害、紛争などの理由で悪化した居住環境を改善するために世界中で様々な事業を展開する国連ハビタットのパートナー団体。プロジェクトマネージャーは、まちづくりの視点から、現地の事情、状況に合わせてプロジェクトを立案し、現地の人々や関係団体と調整しながら事業を進め、問題解決を目指す。

「誰一人取り残されない社会」の実現を目指す

 2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、国際社会が貧困を撲滅し、持続可能な社会を実現するために、世界中の一人ひとりに行動を促す重要な指針を設定したものです。ハビタットとは「住まい」、「すみか」を表す言葉で、国連ハビタットは世界各地の悪化した居住環境を改善する様々な事業を実施地域の国、国連機関、企業や市民と協力しながら展開しています。
 日本ハビタット協会は、国連ハビタットの重要性を日本国内にアピールする役割はもちろん、国内外の居住環境改善事業のために実際に現地へ赴く仕事も担うNPOです。東京本部においては、国連ハビタットの活動の啓発、事業のための募金活動の推進、会報「まちづくり通信」の発行、各種イベントや講演会へ参加、またはそれらを企画し開催するなど、広報関連の業務が中心です。国連ハビタットが大きな事業を展開する際、市民に何ができるかを考え実行することで支援につなげるのです。例えば募金活動なら、全国の空港への募金箱の設置と募金の回収はボランティアさんにお願いし、集まったお金を国別に仕分けする作業は「気軽にできる国際協力」として企業の社員研修に組み入れてもらうなど、提案から実施まで飛び回っています。企業や団体に呼んでいただいた時は、SDGsや現在私が手がけるプロジェクトについて話します。「誰一人取り残されない社会」の実現にはみんなが行動することが重要で、そのとっかかりや協力の方法には様々な形があると知ってほしいと思っています。

太田 祥歌さん

ラオスの子どもたちが自然を守る力を身につけるまで

 日本ハビタット協会として手がける開発途上国の居住環境改善事業では、年に5回(1回に2週間ほど滞在)は現地を訪れます。現在の支援活動はラオスのまちづくり事業がメインです。ラオスの自然環境を守る「植林事業」、給食や教科書を提供する「子どもの生活環境改善事業」に続き、今年度、私がゼロから携わった「環境教育事業」が始まりました。これは、中学校で実施した「植林事業」のワークショップに参加した先生たちから、子どもたちがもっと環境について学べる機会が欲しいと声が上がり、それに応えて私が現地の大学に提案し、農業事務所や教育委員会とも連携してプロジェクト化しました。
 環境教育といっても、ラオス語の教科書さえ一人一冊行き渡らない現状なので、まずは「木を切り過ぎるとどうなるの?」「CO2が増え過ぎると?」といった漫画やクイズを取り入れた親しみやすいテキスト作りに着手。さらに、子どもへの教育はいいことだと大人にも思ってもらうため、大人に向けても「木を切っても再生する社会にしなくてはならない」との理解を促すなど、事業を一過性のものにしないよう腐心しています。自国の自然に誇りを持っているラオスの人々なら、それが失われるかもしれないこと、未来に受け継ぐには大人が行動しなければならないことに気づいてくれるはずですし、環境教育によって子どもが大人に教えてくれるかもしれません。今の私の目標は、ラオスの子どもが自分たちの自然環境を守っていく力を身につけること。子どもたちには社会を変える力があると信じています。

太田 祥歌さん

問題解決へのアプローチの引き出しを増やす

 海外で働きたいという憧れの中でひきつけられた国がタイで、大学院ではタイとラオスの国境地域でのヒトの移動について研究しました。それが縁でラオスの支援を行っていた協会でアルバイトを始め、職員となりました。
 開発援助の仕事は一国の中では収まらないのが常で、地域だけ見ていてもうまくいかないし、広範囲をにらんでいれば進むわけでもありません。現在の私の仕事では、世界で掲げる目標のもと、ラオスと日本を行き来しながら東南アジアに目を凝らし、地域に腰を据えた支援ができています。現地の人々と密に関わってどんな問題があるかを学ばせてもらい、昔ながらの対処方法などにも耳を傾けつつ何が提案できるかを考え、ともに問題解決を目指す、その過程も含めてやりがいを感じます。解決にすぐにたどり着けないことが多いのですが、それなら次はどうアプローチしようかと引き出しを開けていくのが楽しいのです。現地の人たちがプロジェクトの成果を笑顔で報告してくれる時、自分たちなりの工夫を伝えてくれる時がうれしい瞬間です。
 現地での短い滞在期間中に柔軟な提案ができるよう、日本にいる期間は自分の引き出しを増やす努力をしています。勉強会や国際協力系のイベントに顔を出し、他の団体の取り組みを学んだり意見交換したり。国際会議に出席する機会もあり、ラオスを軸に新しいつながりが広がることも魅力です。

ある1日のスケジュール

  • 8:00〜9:30

    通勤中に英語の勉強、その日やることの確認、イベントや勉強会情報の確認、申し込み

  • 9:30〜10:30

    メールチェックと返信、他のスタッフへの確認事項を済ませる

  • 10:30〜12:50

    国内での広報イベント等準備、広報資料作成、Facebook等の記事投稿

  • 13:50〜17:50

    プロジェクトの書類、報告書作成、現地との連絡

  • 17:50〜18:30

    プロジェクトの打ち合わせ、進捗共有

マストアイテム

ほぼ日手帳

ほぼ日手帳
プロジェクトの進捗、打ち合わせ内容、現地からの報告、上司からのアドバイス、浮かんだアイディア、ボランティアさんからのうれしいコメントなど、なんでも書き込んでいます。

この仕事に就くには...?

NPO法人として途上国を支援する仕事は即戦力が求められるため、新卒採用のケースは少ない。学生のうちから、ボランティア活動だけでなく、インターンやアルバイト、途上国支援団体への参加など、NPOの実際の業務に関わる形での経験を積み、自分の強み(得意な言語、地域など)を伸ばす努力をしよう。留学経験こそ必須ではないが、単独出張も多いので海外渡航の経験はあったほうがよい。

太田 祥歌さん

太田 祥歌さん
Shoka Ohta

認定NPO法人日本ハビタット協会
プロジェクトマネージャー
※2018年取材時

2011年国際コミュニケーション学科卒業。卒業直後の東日本大震災を機にNPOの東北駐在スタッフとして1年間復興支援に携わる。タイへの語学留学を経て2014年横浜市立大学大学院年社会文化研究科博士前期課程へ進学。タイとラオスの国境地域のヒトの移動について研究。大学院在学中より日本ハビタット協会でアルバイトを始め、2017年より正規職員。

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