坂部 健太郎
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海上自衛隊 幹部自衛官
海上自衛隊
海上幕僚監部 防衛部 防衛課 防衛班
坂部 健太郎さん
自衛隊の幹部自衛官って?
陸・海・空のいずれかの自衛隊に所属して、現場部隊や艦艇での指揮をとる階級にある自衛官。強い責任感と実行力で部隊の目的を達成するために判断をし、命令を下す。最高位は統合幕僚長。制服の着用が義務付けられているため「制服組」と呼ばれる。各自衛隊の管理運営などを任務とする防衛省の文官はいわゆる「背広組」と呼ばれる。

世界の海を活躍の場とする任務に従事

 学生時代に安全保障への関心が高まったことや、米国で同時多発テロが起きて自衛隊がインド洋に派遣されるなど、自衛隊の活動が拡大していたことにも影響を受け、幹部自衛官となる進路を選びました。
 陸上自衛隊は本土防衛と災害派遣などに従事することから国内での任務が多く、航空自衛隊は航続距離との兼ね合いなどもあり他国まで飛ぶことはあまりありません。一方、海上自衛隊は海外諸国との関わりも多く、世界中とつながっている海を活動の場としているため、海上自衛隊に志願しました。
 入隊後は幹部候補生学校に入り、約1年間自衛官としての体力づくりや、海上自衛隊に関する知識や防衛に関する法律を学ぶなど、幹部になるための入口教育を受けます。その後6ヶ月間の遠洋練習航海に出て、艦で生活をしながら基礎的な訓練を受けつつ、さまざまな国の港に寄港して国際感覚を養っていきます。帰国後に、各自の希望や適正にあった職域に分けられ、私は水上艦艇に配属となりました。これまでイージス艦を含む護衛艦や練習艦などに乗艦して、テロ対策特別措置法に基づいてインド洋方面へ派遣されたり、海賊対処法に基づきアフリカのソマリア沖・アデン湾への派遣任務を経験しました。

坂部 健太郎さん

各国と連携して課題にあたり、親善の任務も負う

 米国同時多発テロ後のインド洋派遣の際は、米国を主体とする有志連合諸国の艦艇に対する後方支援の一環で、日本の補給艦が燃料等の補給を行いました。補給艦はタンカーのような艦なので自己防護能力を備えていません。そこで護衛艦がついて補給艦を守るのですが、私は遠洋練習航海後の最初の配置でこの護衛艦に乗り組みました。またソマリア沖・アデン湾では、貧しい人々が海賊となって民間商船を襲うことが頻発して世界的な問題となっています。そこでこれら商船を守る任務を帯びた艦に航海長として配属されました。任務中は他国の海軍と合同で訓練をしたり、調整をすることもあるのでコミュニケーション能力や語学力が必要となります。
 もちろんこのような任務ばかりではなく、海上自衛隊が親善的な役割を果たすこともあります。遠洋練習航海では10ヶ国以上を訪問し、一度寄港すると3~4日間程度停泊します。その際に開かれるレセプションには当該国の外交官や日本に関係する企業の役職者などが出席したり、場合によっては大統領が訪れることもあります。私たちは「日の丸を背負っている。」という意識のもと、レセプションに出席して各国の方々と交流を深めます。

幹部自衛官として現場と施策部署をつなぐ

 現在は市ヶ谷にある海上幕僚監部内の海上自衛隊の将来の方向性を策定する部署で、自衛官となってほぼ初めてとなるデスクワークに就き、行政的な業務にも携わっています。防衛省および自衛隊が実施する海外における活動の中でも主要なもののひとつである海賊対処行動部隊の将来に関することや、軍縮軍備管理に関する事項、さらには海上自衛隊の活動がどのような方針に基づいてどう行われているかを部外の人に説明したり、講演するなどしています。こうした仕事では他省庁を含め多くの部署が関係してくるので、意見の集約や調整に時間がかかりますが、国際情勢を考慮したうえで、日本にとって何が最善の選択肢かを考える良い機会にもなっています。
 また海上自衛隊の施策の中心となる部署にいるので、私の周囲では将来的な海上防衛力の整備やロジスティクスの検討、防衛協力・交流の案件などさまざまなことを検討しています。その中で作戦や部隊の運用などについては現場を知っている自衛官だからこそ分かる実務に照らした意見を、部隊勤務の経験がない事務官等に話すこともしています。これも幹部自衛官の重要な役割であり、存在意義でもあると考えています。

坂部 健太郎さん

ある1日のスケジュール

  • 7:15〜9:00

    海外や部外から届いたメールや回覧書類などをチェック

  • 9:00〜10:00

    今後の海外寄港地の選定をするミーティング

  • 10:00〜12:00

    業務の遂行方針や処置を記した文書の起案をするなど書類作成

  • 13:00〜13:45

    白書作成事務室と白書の記述について確認

  • 14:15〜15:45

    海上自衛隊幹部学校で外国海軍士官に対して海上自衛隊の現状に関する説明

  • 16:15〜17:15

    各種書類の合議、決裁を得る

マストアイテム

世界地図

世界地図
海上自衛隊は活動範囲が広いので、世界地図や地球儀は手放せない。その活動の範囲や移動のスピード等から、陸上自衛隊は日本の国内地図を、航空自衛隊は日本を中心として近隣諸国が描かれた地図を多用する、と言われている。

この仕事に就くには...?

一般の大学を卒業した人の場合は、採用試験時に陸・海・空を選択、合格後にそれぞれの「幹部候補生学校」に入校し、必要な知識や技能を習得。海上自衛隊は1年間の課程を終えると階級が3尉となり幹部自衛官となる。体力に自信がなくても、幹部候補生学校で基礎体力を養えるのでそれほど心配はない。また男性に比べ数は少ないが女性隊員もいる。

坂部 健太郎さん

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Kentaro Sakabe

海上自衛隊
海上幕僚監部 防衛部 防衛課 防衛班
※2018年取材時

2004年国際政治学科卒業、同年入隊。翌年9月に護衛艦「きりさめ」に通信士として乗艦。テロ対策特別措置法に基づいてインド洋方面へ。2008年に護衛艦「あたご」に水雷士として乗艦。2009年、護衛艦「さわかぜ」の航海長に、翌年には護衛艦「たかなみ」航海長となり1等海尉に。現在の階級は3等海佐。海上自衛官としての専門は艦艇に関する用兵と対潜水艦戦。

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