阿部 俊介
CONTRIBUTE TO THE WORLD | 世界のために働く
製薬会社・購買
サノフィ株式会社
Scientific & Clinical Procurement, Head of Japan
阿部 俊介さん
製薬会社の購買職って?
医薬品を開発・製造・販売する企業活動に関係する、さまざまな物品やサービスの購入を行う。
戦略的な購買活動を行うことで、製品の品質やコスト、納期をバランス良く管理する。社内外の調整・交渉の要であり、競争力を維持向上させながら他企業よりも優位に企業活動を進めていくうえで重要な役割を担う。

医薬品関連企業の活動には欠かせない「購買」の仕事

 世界100カ国以上に拠点を持ち、約10万もの人が働く(2016年度)製薬会社サノフィの「Procurement(購買)」部署で働いています。創薬するのに必要な原料や設備、消耗品、サービスなど、企業活動に必要なあらゆるものを必要量、適切なタイミングを見はからって、適正価格で購入する部署になります。もちろんどの企業にも購買の仕事はあると思うのですが、部署や課の単位で必要なものを買う場合と、会社全体で必要なものを購買部で一手に引き受けて購入する場合とがあり、私は後者のパターンで仕事をしていることになります。
 私が購買で関わっているのは、薬の開発に関連したところです。新薬を開発するには10年以上の月日と膨大な研究開発費と人材を必要とします。昨今、研究・開発・製造のすべての過程を自社内で完結させる製薬会社は減少傾向にあり、臨床試験などのさまざまな業務がアウトソーシングされています。そこでアウトソース先の選定や、治験に必要な検査用機械、それに伴う薬品などの購入をしています。また新薬や既発の薬の改良版を発売した後にはマーケット調査なども行いますが、どこの調査会社に依頼するかを選択するのも私の仕事です。
 グローバル企業ですから、アウトソース先の企業の交渉元が海外にあることも多く、アライアンスなどの交渉のために海外出張に行くこともしばしばあります。フランス本社やグローバルにある各拠点、関連部門と連携しながら、購買戦略を策定し、それに則って仕事をしています。

自分のやりたい「職種」で会社を選ぶ

 サノフィに入社したのは、2015年9月です。それ以前は、ソニーモバイルコミュニケーションズに約5年間勤務して、携帯電話のエクスペリアの開発に伴う購買の仕事をしていました。約5年の在籍期間中3年間は米国のサンディエゴに赴任して、携帯に必要な半導体の共同開発や購買活動を主要サプライヤーとしていました。半導体は一見見た目は同じでも、ひとつの本体価格が20円〜1億円!までするものもあるという、価格が見えにくく非常に交渉が難しい部品になります。実際に技術開発できるのかどうかなど、相手が言うことを鵜呑みにするだけでは交渉できないので、多くの正しい情報を事前に頭に入れておく必要がありました。また幾度となく交渉を行い、率直に意見をやり取りすることもここで叩き込まれたと思います。
 ソニーモバイルでは、仕事も英語力も本当に鍛えられました。大変でしたが、仕事の面白さも知り、「もっと購買の仕事で自分の能力を試したい」という欲も生まれ、サノフィへの転職につながりました。きちんとした製品を継続的に適切なコストで買うのは、簡単なようでいて実はとても難しいことです。経験を生かして、商品やサービスの情報を事前に手に入れたり、情報を得るためのネットワークを構築したりしながら、意図した購買につなげています。

購買に最も必要なのはコミュニケーション力

 購買の仕事は交渉事が多く、コミュニケーション力がとても重要になります。購入先は世界中にあり、しかも私の場合、サノフィでは報告や相談をする上司や同僚も海外の拠点にいる外国人ばかり。日本で仕事をしていますが、部署内は完全に英語で仕事をする環境にあります。交渉相手ももちろんさまざまなバックボーンを持つ人ばかりです。国内での交渉ならあまり考慮しなくてよいことも、文化や慣習が異なる人が相手の場合は違ってきます。
 これまでの経験から、海外で交渉を有利に運ぶために必須だと思うことのひとつに、"交渉相手の国の文化や慣習を知る"ことがあります。例えば日本では、エレベーターや車に乗る位置にも上座がありますが、他国にも押さえておくべき慣習がいろいろあります。交渉の際には、こうした慣習を織り交ぜて、「あなたの国のことをちゃんと知っていますよ」とさりげなくアピールすることで、交渉を自分のペースに持ち込むことが良くあります。こうした話は仕事のコツのほんの一端ですが、自分なりに工夫をしながら業務を遂行しています。
 新薬の認可について、かつて日本は世界基準に対して遅いと評価されていた時期がありました。しかし現在は業界や審査機関などが一体となって世界基準に追いついています。「一刻も早く革新的な薬が欲しい」というのは、すべての患者さんの願いです。薬の開発のために必要な治験の開始が1日早まれば、それだけ早く新しい薬を届けることができます。製薬会社の研究開発部門(Research and Development)に近いところで、ものづくりの醍醐味を味わいながら、その責任の大きさも日々感じつつ仕事をしています。

阿部 俊介さん

ある1日のスケジュール

  • 8:30〜9:00

    通勤途中でスケジュールを確認し携帯でメールチェック

  • 9:00〜10:00

    メール処理、会議資料の作成・確認など

  • 10:00〜12:00

    社内外とのミーティング

  • 12:00〜13:00

    ランチ(自席でお弁当を食べながらメールチェックなどする)

  • 13:00〜19:00

    社内外とのミーティングや資料の作成など

  • 19:00頃

    退社(ただし週に1、2回欧米と夜に電話会議あり)

マストアイテム

スターバックスのタンブラー

ボールペン
他企業との契約を結ぶ書類にサインする際には、やはりちゃんとしたペンが必要になるので妻からプレゼントしてもらったボールペンを使っています。

この仕事に就くには...?

世界100カ国以上でビジネスを展開する企業のため、語学力はもちろんだが多様な文化を理解した上でコミュニケーションすることが求められる。また自分に何が出来るか?と日々創意工夫しながらチャレンジし続けることも大切。

阿部 俊介さん

阿部 俊介さん
Shunsuke Abe

サノフィ株式会社
Scientific & Clinical Procurement, Head of Japan
※2017年取材時

2003年国際政治学科卒業、アルプス電気入社。東北の拠点でPC周辺部材の調達の仕事に携わる。2010年、半導体の購買に携わりたいと、ソニーモバイルコミュニケーションズに入社。同時にインターナショナルMBAの取得のためにビジネススクールに通う。2012年~2015年年米国サンディエゴに赴任(ビジネススクールは休学)。2015年、サノフィに入社(休学していたビジネススクールに復学し、2017年MBA取得)。

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